1.そもそも労災とは
「労災」とは労働災害の略で、事業に関し労働者として働いたことが原因となり発生した災害を言います。
そして、労災に当たると認定されると、労災保険(労働者災害補償保険)に基づき様々な給付金が国から支給されます。
これらの一連の流れを、「労災がおりる」とか、「労災がおりなかった」などと言うことがあります。
2.どんな給付金がもらえるか
労災と認定されたされた場合にもらえる給付金には様々な種類があります。簡単に説明すると以下のようになります。
①療養補償給付金
怪我の治療のために必要な病院代で、治療費は労災から全額支給されます。
②休業補償給付金
休業した期間の給料の約6割が支給されます。
③休業特別支給金
休業した期間の給料の約2割が支給されます。
④障害補償給付金
月給の約302日分が支給されます。
⑤障害特別支給一時金
年間賞与の約302日分が支給されます。
⑥障害特別支給金
障害に応じた定額が支給されます。
給付される金額については事案によって様々ですが、総額で数千万円になることもしばしば見られます。
3.労災がおりるためには
労災は、事業に関し労働者として働いたことが原因となり発生した災害に対して保険が給付されるものなので、労働者が労働関係の下労働に従事している際に起きた災害でなければなりません。これを業務遂行性と言います。
さらに、労災として認定されるには、その災害が「仕事中の」ものでなければならず、仕事が原因となったということで、仕事と怪我との間に相当の因果関係がなければなりません。これを「業務起因性」と言います。
労災と認定されるには、業務起因性と業務遂行性という2つの要件が認められなければなりません。
4.労災がおりない場合
労災認定に際しては、業務遂行性を以下の3つに分類し、その中で業務起因性の有無を判断します。
(1)事業主の支配・管理下で業務に従事している場合
使用者の指揮、命令のもとに所定の就業場所で就業時間中に働いている場合はもちろん、一般に労働関係の下で通常予想される行為をしている場合、通常であれば業務起因性が認められます。ですが、以下のような場合は業務起因性が認められません。
➀労働者が仕事中に私用を行い、又は業務を逸脱する恣意的行為をしていて、それが原因となって災害をこうむった場合
➁労働者が故意に災害を発生させた場合
➂労働者が個人的なうらみなどにより、第三者から暴行を受けて被災した場合
➃地震、台風など天変地異によって被災した場合
(2)事業主の支配・管理下にあるが業務に従事していない場合
出社して職場にいる限り、労働契約に基づく事業主の支配管理下にあると認められますが、休憩時間や就業前後は実際には仕事をしているとは言えません。このようなとき、私的な行為によって発生した災害は業務起因性が認められませんが、職場の施設・設備や管理状況等が原因で発生した災害は業務起因性が認められます。
例えば、昼休みや就業時間前後に職場にはいたが仕事をしていなかった場合は業務起因性が認められることになります。
(3)事業主の支配下にはあるが、管理下を離れて業務に従事している場合
出張や社用での外出、運送、配達、営業などにより職場以外で業務に従事している場合、事業主の管理下を離れてはいるものの、労働契約に基づいて事業主の命令を受けて仕事をしているといえます。ですので、用務先へ向かって住居又は事業場を出た時から帰りつくまでの全行程にわたって業務災害と認められます。
また、事業場外の就業場所への往復、食事、用便など事業場外での業務に付随する行為を行う場合も同様です。
ただ、私用で寄り道をしたような場合は業務起因性が認められません。
5.どこに相談するか
労災について相談しようかな、と思ったとき、どこに相談するのがベストでしょうか。
通常であれば、労災について会社に申請すれば、会社の方で手続きを進めてくれることがほとんどです。ですので、どこかに相談しようか、と思われている時点で会社が協力的でなかったり、会社の手続きに不満があるような場合ではないでしょうか。
あとは、相談するのに思い浮かぶのは「労基」でしょうか。労基、すなわち労働基準監督署は労災の認定を行う行政機関ですので、無料で労災に関する相談を受けてくれ、アドバイスをしてくれることもあるでしょう。しかし、労基に対しては、どのような証拠を揃えると良いか、診断書にどの文言を入れると等級があがるか、などといった踏み込んだアドバイスは期待できないでしょう。また、裁判所によっても判断が分かれる事例もありますので、必ずしも労基署の判断が法律的に正しいとは言えない場合もあります。
また、これまでのコラムで述べてきましたが、労災に遭った場合、会社に対して損害賠償請求をできる場合がありますので、早い時点から法律的に可能な請求の手段と金額を見通しをつける方が得策と言えます。
したがって、労災に遭われた時点で弁護士に相談することをお勧めします。
当事務所では、労災を多く取り扱っておりますので、病院を受診する際のポイントからお教えいたしますし、証拠の収集についてアドバイス、場合によっては証拠の整理、調査も行います。
請求後の見通しについても、受給できる金額、弁護士費用について、受任前に詳細にご説明しますので、是非お気軽に当事務所にご相談ください。