仕事中に骨折した場合、労災給付がもらえるのか?休業補償期間についても解説

危険な作業はもちろん、移動による転倒や落下物による事故など、多くの職場にはケガの危険性があります。仕事中の事故によって骨折してしまったという例も少なくはありません。

では、仕事中に骨折してしまった場合、事故にあった労働者はどのような労災給付を受けられるのでしょうか。

今回は、仕事中の骨折による労災給付について、給付内容や休業した場合の休業補償期間に触れながら、詳しくご説明します。

骨折の労災認定基準のポイント

業務中に骨折した場合の労災認定基準について見ていきましょう。

骨折の労災認定ポイントは「業務起因性」と「業務遂行性」

骨折をはじめとした傷病について労災認定を受けるには、「業務上の傷病」であることが認められなければなりません。「業務上の傷病」かどうかの判断は、「業務起因性」および「業務遂行性」の有無がポイントとなります。

業務起因性 業務と傷病に因果関係が認められること ①事業主の支配・管理下で業務を行っている場合 業務起因性を認め難い何らかの事情がない限り、業務起因性は認められる。
②事業主の支配・管理下にあるものの、業務を行っていない場合 私的行為による傷病の場合、業務起因性は認められない。
③事業主の支配下にはあるものの、管理下を離れて業務を行っている 業務起因性を認め難い何らかの事情がない限り、業務起因性は認められる。
業務遂行性 労働契約に基づき、労働者が事業主の管理・支配下にある状態のこと ①事業主の支配・管理下で業務を行っている場合 担当業務や担当業務の付随業務を会社や事業所内で行う

 

②事業主の支配・管理下にあるものの、業務を行っていない場合 業務の休憩時間内に会社や事業所内で休憩を取る

トイレに行く・水を飲むなどの生理的行為

③事業主の支配下にはあるものの、管理下を離れて業務を行っている場合 営業や出張による外出、運送・配達業務による外出

事業所外の勤務場所への往復や食事などの付随行為

「業務起因性」と「業務遂行性」のどちらもが認められる場合、傷病は労災と認定され、被災労働者は労災保険による補償が受けられます。

骨折しても労災と認定されないのはこんな時!

「業務起因性」と「業務遂行性」の両方が認められない場合、傷病は労災と認められません。具体例としては、以下のようなケースが考えられます。

・業務の休憩中に近くの飲食店に行く途中、事故にあって骨折した。
→事業主の管理下から出ているので、「業務遂行性」が認められない。

・休憩中に事業所の敷地内でバレーボールをしていて、指を骨折した。
→私的行為によるケガなので、「業務起因性」が認められない。

・仕事のない休日に事業所の敷地内で遊んでいて転倒し、足を骨折した。
→事業主の支配・管理下にはない私的行為であり、「業務起因性」も「業務遂行性」も認められない。

・個人的なトラブルによって同僚から暴行を受け、骨折した。
→同僚の故意による傷病であり、「業務起因性」が認められない。

上記のように「業務起因性」や「業務遂行性」が認められない場合は、骨折しても労災と認定されず、労災保険による補償を受けることはできません。

骨折で労災が認定された場合、受けられる給付は?

骨折で労災認定を受けた場合、受けられる可能性がある給付としては、「療養給付」「休業給付」「障害給付」の3種が考えられます。

療養(補償)給付

療養(補償)給付とは
療養(補償)給付とは、労働者が労災による傷病で療養が必要となった時に、労災保険から支給される給付金です。療養のために医療機関や薬局でかかったお金が給付されます。

療養(補償)給付の補償内容
・労災指定医療機関における治療や薬剤の無料提供
・労災指定医療機関ではない医療機関や薬局でかかった治療費や薬剤費の現金支給(振込)

休業(補償)給付

休業(補償)給付とは
休業(補償)給付とは、労働者が労災による傷病で労働ができない状態になり、それによって賃金を受けられない時に、労災保険から支給される給付金です。休業(補償)給付は、休業4日目から支給されることになっています。

休業(補償)給付の補償内容
・ひとつの事業に就く労働者の場合→休業日数×(給付基礎日額の60%+特別支給20%)
・事業主が同一ではない複数の事業就く労働者の場合→休業日数×(複数の就業先における給付基礎日額相当額の60%+特別支給20%)

障害(補償)給付

障害(補償)給付とは
障害(補償)給付とは、労災による傷病が治った時に、身体に一定の障害が残った場合、労災保険から支給される給付金のことです。定められた障害等級に応じた額が支給されます。

障害(補償)給付の補償内容
・残った障害が、障害等級第1級〜第7級に該当する時→障害(補償)等年金、障害特別支給金、障害特別年金
・残った障害が、障害等級第8級〜第14級に該当する時→障害(補償)等一時金、障害特別支給金、障害特別一時金
(障害等級に応じた支給額は、厚生労働省資料でご確認ください。)

労災の休業補償期間とは?

労災によって、骨折や打撲などのケガを負って休業した場合、いつまで休業補償を受けることができるのでしょうか。

休業補償を受けられる期間は、何ヶ月、何年という形で定められているわけではありません。
以下の休業補償給付の3つの要件を満たしてさえいれば、被災労働者は休業補償を受け続けることができます。

休業(補償)給付の3要件
①業務上または通勤による傷病の療養のため
②労働することができない状態にある
③賃金を受け取っていない

ただし、療養により休業してから1年6ヶ月経過してもその傷病が治っておらず、規定の傷病等級表の傷病等級に該当する障害が認められる場合には、休業(補償)給付の支給に変わり、傷病(補償)年金が支給されることになります。

ボルトを抜く手術の際にも労災の給付の対象になるか?

骨折した場合の治療として、体内にボルトを入れ患部を固定することがあります。ボルトを入れた状態で症状が治癒し、労働を再開すれば、それまで受け取っていた療養(補償)給付や休業(補償)給付は打ち切られることになります。

ただし、症状の治癒後であっても、ボルトは後から手術で抜かなくてはなりません。再手術により、入院やリハビリが必要になることもあるでしょう。
この場合、再度療養(補償)給付や休業(補償)給付を受け取れるのでしょうか。

結論から言うと、骨折治癒後のボルトを抜く手術による療養や休業に対する労災補償を、被災労働者は受けることができます。症状の再発による補償の再開が認められているためです。
ボルトを抜く手術も、再発として扱われます。

ボルトを抜く手術によって再び労災補償を受ける際には、療養(補償)給付や休業(補償)給付の請求書を必ず労働基準監督署に提出するようにしてください。

まとめ

業務上の骨折は、労災として療養(補償)給付や休業(補償)給付、障害(補償)給付等労災給付の対象になります。症状によって受けられる給付は変わってくるので、まずは速やかに医療機関を受診し、医師の診断を仰ぐようにしましょう。

労災については、会社が労災を認めない、手続きに協力してくれない等、手続きがスムーズに進められないケースもあります。このような労災に関するトラブルは、労災案件の実績豊富な弁護士にご相談ください。法律的な立場からのサポートを受ければ、労災トラブルは解決しやすく、労災を被った方は傷病の療養に専念しやすくなります。